“濃密、そして達人的”
2012年のデビューコンサートの批評記事において、ターリストリオはすでに「驚嘆」と「感嘆」という言葉を用いて絶賛され、執筆した記者は続けてターリストリオの持ち得る「深い濃密さと達人技」、「音色における非常な多彩さ」、そして「楽曲の細部にまで浸透した極めて緻密な精神」を惜しみなく証言した。
アウクスブルクを拠点とするピアノトリオ「ターリストリオ」は国際的なアンサンブルとしての新たな世代に数えられる。兄妹であるヴェンツェル、エリーザ・グンマーとチェリストの岡田琢朗は2011年にこの日独トリオを結成し、以来彼らのコンサート活動はバイエルンからオランダ、スイス、そして日本へと広がる。
演奏スタイルや楽曲解釈においては、特にクリストフ・ヘンシェル、マリーザ・ゾマー、タテヴィック・モカチアン各氏の薫陶を受ける。また日本とドイツ間の文化的交流・精神的な理解を深め合うことに何よりも意義を求め、これらを掲げた様々な企画に携わっている。
大学在学中は、ショスタコーヴィチ作曲「ピアノ三重奏曲第1番」のザールブリュッケン室内楽ウィークでの演奏の模様がザールランド放送局により収録・放送され、2019年には堺市東文化会館、西脇市立音楽ホール「アピカホール」、フィガロホール合同主催の下で日本でのコンサートツアーが敢行される。ターリストリオの弦楽器奏者両名は世界的アンサンブルである「ヘンシェル弦楽四重奏団」よりゼーリゲンシュタット弦楽フェスティバルへ招へいされ、2019年記念賞を受賞。同ピアニストはザール総合大学やリヒャルト・ヴァーグナー協会等より様々な奨励金を授与される。
2022年は、アウクスブルクにおける音楽祭「Kulturtag am alten Gaswerk」への出演及び同音楽祭の助監督を務め、また日本におけるコンサートツアー第2弾においては「びわ湖大津秋の音楽祭」へ出演予定。そして10月にはラフマニノフ等の作品をカバーした待望のファーストアルバムがレーベル「ソロムジカ」よりリリースされる。
ターリストリオはBMR Artist & Project Managementの提携パートナーであり、VdSQアンサンブル協会会員として音楽文化のさらなる普及に努めている。プロフェッショナルとしてのクオリティとあらゆる世代が楽しめる親しみやすさ、そしてダイナミックかつ深い楽曲解釈から、訪れる各地で音楽ファンを魅了するなど、欧州や日本にて今後のさらなる活躍が最も注目される若手アンサンブルの一つである。
エリーザ・グンマー (Elisa Gummer)
7歳でヴァイオリンを始め、ミュンヘン音楽大学講師のゲァトルート・シルデ氏に師事。
アウクスブルク大学レオポルド・モーツァルト学院にて研鑽を積み、ベルンハード・トゥルック氏の下で芸術家養成課程及び音楽教育学課程を、続くマスター課程においてはヘンシェル弦楽四重奏団第一ヴァイオリンのクリストフ・ヘンシェル氏に師事し、それぞれ優秀な成績で修了。
2010年、アウクスブルク・ニュルンベルク音楽大学オーケストラの公演においてコンチェルトを共演し、また2012年にはアウクスブルク歌劇場におけるオペラ公演のコンサートミストレスに抜擢。2014年から17年にかけてはザール音楽大学室内楽マスター課程に在籍した。
これまでにデネス・チグモンディ、インゴルフ・テューバン、ハンス・ペーター・ホーフマン、ヘァヴィック・ツァック、ゴッドフリード・フォン・デァ・ゴルツ各氏のマスタークラスを修了。
年間多数のオーケストラプロジェクトに出演する傍ら、アンサンブル奏者としても幅広く活躍。ヨーロッパにおいてはドイツ、スイス、ポルトガル、オランダ、ルクセンブルクといった各国に活動の場を広げ、日本においてはこれまでに長野、大阪、兵庫、滋賀などの各地でコンサートプロジェクトに出演する。2019年、ゼーリゲンシュタット弦楽音楽祭からの招聘により同音楽祭に出演し、ヘンシェルQ25周年記念賞を受賞。
ヴェンツェル・グンマー (Wenzel Gummer)
ドイツ・ミュンヘンに生まれ、5歳よりピアノを始める。
アビトゥーア(大学進学課程)修了を前に、ミヒャエル・プロックシュ、リトゥワ・ソュステット、アミール・カッツ、クラウス・シルデの各氏から薫陶を受け、この間ソリストまた室内楽奏者として、ミュンヘン国際青少年ピアノポディウムなど様々なコンクールにおいて1位を獲得。15歳の年にはオーケストラとピアノコンチェルトを共演する。
ヴュルツブルク音楽大学に進学してからはベァンド・グレムザー氏に師事し、ピアノデュオによって室内楽部門におけるフィッシャー・フラッハ賞を受賞。2010年の首席卒業を前にイタリアにてマリーナ・ソマー氏にも師事し、芸術的側面において多大な影響を受ける。イタリア留学中は様々な国際コンクールに出演し、各々最優秀賞を受賞。
2010年からはザール音楽大学においてトーマス・ドゥイス、タテヴィック・モカチァン、フィデレ・アントニチェリの各氏に師事。ブルーノ・エリザベート・マインデル財団、ザール学術財団、リヒャルト・ヴァーグナー協会、ザール大学より奨学金を授与される。在学中にソロ及びデュオの演奏模様がザールランド放送局により収録され、好評を博した。
これまでにドイツ、フランス、スウェーデン、イタリア、スイス、オランダなどのヨーロッパ各国においてコンサートに出演。
岡田琢朗
大阪府堺市出身。幼少より大阪音楽大学付属音楽学園(現音楽院)においてチェロを学び、2009 年よりドイツ、バイエルン州アウクスブルク大学レオポルド・モーツァルトマリオぶらうまー2014 年に同大学を首席で卒業してからは、チェロ専攻として同大学マスター過程、加えて室内楽専攻としてザール音楽大学マスター過程にそれぞれ在籍。
これまでにチェロを熊本由美子、斎藤建寛、ハルトムート・トゥルンドレの各氏に、室内楽をエフゲニア・ルビーノヴァ、クリストフ・ヘンシェル(ヘンシェル弦楽四重奏団)、タテヴィック・モカチアン、マリオ・ブラウマーの各氏に師事し、ユリウス・ベルガー、ヘルマー・シュティーラー、ヴォルフガング・ベッチャー、ウェンシン・ヤン各氏のマスタークラスを修了
ソリストまたはアンサンブル奏者として、大阪・東京・兵庫・長野など、これまで国内各地において演奏活動を展開し、ヨーロッパへ移住後はアウクスブルク市立歌劇場におけるオペラ公演や、オーケストラプロジェクト“ウニ・コルデ”などにおいて首席奏者を歴任。加えて室内楽の分野でも様々なコンサートプロジェクトへの出演を担い、ドイツ、スイス、ルクセンブルク、オランダなど各国で幅広いジャンルの演奏に携わる。また、ヴィルフリード・ヒラー氏やグラハム・ウォーターハウス氏といった現代を代表する作曲家とも交流し、各氏の作品の実演を担った他、ヘンシェル弦楽四重奏団やヴァイオリニストの松野迅氏、ギタリストの田嶌道夫氏といった著名なアーティストとも共演を重ねている。
2019年、ゼーリゲンシュタット弦楽音楽祭からの招へいにより同音楽祭に出演し、ヘンシェルQ25周年記念賞を受賞。また同年には、東京大学学長澤和樹氏によるミュンヘン国立音楽大とのトップ会談に同行するなど、同氏訪独時の現地サポートを担った他、同氏指揮によるニュンヘンブルク・フェスティバルオーケストラにおいては、同氏との共演に加えスピーチの同時通訳を担当。その他にも、前衛オペラ楽団「オパーンマッハー」のソリストへの抜擢や、講演会への登壇、ドイツ公共ラジオ放送へのゲスト出演や、2018年より公財ディーセン音楽学校講師に就任し、演奏活動の傍ら後進の指導にも尽力するなど、あらゆるニーズに応えるマルチアーティストとして多種多様な分野からの厚い信頼を得ている。
Photo: Zsuzsánna Barabás